<ベルモントS>
「日本馬初の米クラシック制覇」「同一G1レース兄姉弟3連覇」-さまざまな夢を乗せて日本のカジノドライヴ(牡3、藤沢和)が7日(日本時間8日早朝)のベルモントS(米G1、ダート2400メートル=ベルモントパーク)に出走する。渡米初戦のピーターパンSを大差で勝利し、快挙への期待も高まる。藤沢和雄師(56)の思いに迫る。
「おれももういい年だからね。あと何年か余力を持って調教師をしていれば、勝ちクラも伸ばせるし、クラシックだって勝てる。そんな気持ちもあった」。
海外遠征のパイオニア的存在だった藤沢は、98年にタイキシャトルでジャック・ル・マロワ賞(仏G1)を制した。だが、その後は海外に対しては慎重になった。勝って満足をしたのではない。勝ったからこそ、厳しい現実を知ったのだ。
「海外は賞金が安いのに相手が強い。思い通りに行かないことも多い。負けたときの挫折感が大きい。若いうちはぶつかっていこうと思ったけどな」。
海外遠征は帯同する人間だけでなく、日本に残されたスタッフにも大きな負担がかかる。守りに入りそうになった心を揺さぶったのが、新しい出会いだった。「凱旋門賞を勝ちたいという馬主」と紹介されたカジノドライヴの山本英俊オーナー(52=会社役員)が、山を動かした。
「運が悪いことに、彼はおれより若かったんだよ。本業でも名をなした人だけに、パワーは本物。競馬でうまくいかないことも知っているし、今までに出会ったことのないタイプの馬主だった。何よりも人を使うのが上手だね(苦笑)」。
若さと情熱に半ば押し切られる形となった藤沢は、二人三脚で世界を目指す戦いを始める。道のりは想像以上に厳しかった。
「山本は血統は抜群に詳しいけど、セリで馬を見てるのはおれ。何億もする買い物をさせておいて『走りませんでした』ではね…。調教師にはすごいプレッシャーだ。今まで以上にしっかりやらないといけないと肝に銘じた」。
カジノドライヴだけではない。06年キーンランドノベンバーセールで、当歳落札額として当時の北米レコードとなる270万ドルで落札されたエレクトロキューショニストの半弟など、山本は、トレーナーがこれと見込んだ馬には投資を惜しまない。
「彼はいろいろな事業を後援しているけど、競馬が一番金を使わせている。走らないと肩身が狭い」。
しばしば冗談交じりに話す言葉だが、これは本音そのもの。藤沢は、馬の仕入れから調教まで調教師としてのすべてが試される重圧と戦っている。
カジノドライヴは「想像以上」というレースぶりでピーターパンSを勝った。
「初めて尽くしで勝ったのはすごいが、これからもっともっとうまくいかないことが出てくる。前哨戦は前哨戦。次を勝って、だ」。
完勝だった前走の後も、表情が緩んだのはほんの一瞬。すぐに勝負師の顔に戻った。ベルモントSを制した時、心からの笑顔を浮かべることができる。(敬称略)
こんな記事読んじゃうと、武豊を降板させたのもわかる気がする・・・
頑張れ、カジノドライブ!
頑張れ、武豊!
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